アメリカの湿地帯を歩いていた時の事である。
突然背後から何者かに体当たりをされた。
その勢いはあまりにも強く、俺はされるがままに吹っ飛んだ。
宙を舞いながら必死の思いで振り返るとそこにはワニがいた。
「そうか、こいつは俺を食おうってんだな」
そんなことを考えていると、振り返ったのが災いして俺は岩に後頭部を打ち付け、気を失った。
目が醒めると俺の眼の前にブルブル震える俺がいた。
視線が低い。ほぼ地平線から俺は俺を見ている。
「気を失ってたんだから当たり前か」
「いや、なんかおかしいぞ」
俺はワニになっていた。
という事は多分目の前にいる俺はワニだろう。
一気に形勢逆転だ。
ワニのバカな脳でも自分の状況はわかるらしい。
俺を食おうと思って襲ったら中身が入れ替わってしまったのだ。
「そうだ、今度はお前が食われる番だ」
俺はワニにそう言ったが声帯の構造上ガーガー言っただけだった。
それでもワニには伝わったらしい。
ビビりすぎて失禁している。
情けないやつめ。今すぐ食ってやる。
俺はワニに襲いかかったが、ワニも必死だ。
寸でのところで避けられた。
しかしワニの避け方がまずかったのかワニは頭を打って倒れてしまった。
「よし、食ってやろう」
そう思っていると何故だか眠くなってきた。
俺はワニを食べる直前で睡魔に負けて眠りに落ちてしまった。
気がつくと目の前にワニがいた。
ワニは勝ち誇ったような顔をしている。
なるほどまた入れ替わったのか。
また一気に形勢逆転だ。
おれは一目散に逃げ出した。
股間が冷たい。
さっきワニが失禁しやがったからだ。
必死で逃げたがワニに追いつかれた。
そして背後から思いっきり体当たりをされた。
頭を打った。
気を失った。
眼の前に俺がいた。
何回それを繰り返しただろうか。
俺たちは何度も何度も入れ替わった。
気づくと日は西に傾きかけていた。
俺とワニは何十回も入れ替わった。
途中でお互いどっちがどっちかわからなくなり確かめ合ったりもした。
すると遠くから車の音が聞こえてきた。
車は俺とワニの戦いに気づくとこちらに寄ってきた。
車に乗っていたのはハンターだった。
俺がワニに襲われているのに気付き俺を助けに来てくれたのだ。
ハンターはワニに向かって銃を構えた。
しかし運の悪いことにその時俺はワニだった。
「ちょっと待て、俺は人間だ!」
俺はそうハンターに叫んだか声帯の構造上ガーガー言っただけだった。
その時、突然ワニが俺にぶつかってきた。
ワニが、またどっちがどっちかわからなくなってたのか、それとも助けてくれたのかはわからない。
撃たれる直前で私とワニは入れ替わった。
ギリギリのところで私は命拾いした。
結果的に私が今生きているのはあのワニのおかげだ。
ハンターは何も知らない。
ハンターは俺に向かって
「危ないところだったな」
と言った。
「危なかったのはお前のせいだ」
と言いたくなったがぐっと言葉を飲み込んだ。
この体験は俺とワニにしか理解できない。
俺とあいつの思い出だ。
俺はワニに手をあわせると、ハンターと一緒に街に帰った。
さっき爬虫類顏のKAT-TUNの上田くんを見てたらそんなことを思い出した。