「お洒落は足元から」これはお洒落さんたちが良く使う格言です。
私も常日頃可愛くておしゃれでありたいと願っているおっさんなので「お洒落は足元から」という言葉には気を使っていたつもりでした。
しかしある日、「お洒落は足元から」を根底から覆される事態に陥ったのです。
それは仕事の部署の配置転換。それまではスニーカー通勤でよかったのですが、配置換え先はスーツ着用が必要な部署。革靴なんて新卒の時に買ったスリッポンしか持っていません。
私は悩みました。いい革靴は高いのです。上を見れば20万30万ので世界ですし、安いいい革靴でも最低2万3万の世界です。
毎日の通勤を考えると革靴は3足は必要です。しかし革靴のために10万円の予算は出せません。
そこで私は考えました。ヤフオクでボロボロになったいい革靴を買って、自分で手入れして10万円分の革靴を手に入れよう!
題して「1万円で10万円分の革靴を手に入れる大作戦」です。
履きシワの酷いスコッチグレインのストレートチップ(定価3万円)を2000円で落札
まず最初に目を付けたのがスコッチグレインの黒ストレートチップです。
あまりにも履きシワがひどく、甲が波打っているような状態、2000円で入札なしの状態でした。しかし2000円なら思い切ったことも出来ます。私は迷わず落札し、2000円のスコッチグレインのストレートチップを手に入れました。
甲の波うちを解消する
しかしこれをどうやって、3万円のストレートチップに戻すのかが問題です。甲の波うちはひどく普通にシューツリーに入れるだけでは戻らないレベルでした。
そこで、挑戦したのが「革靴をお湯で戻して形を取り戻す」という作戦です。
革靴はその名のとおり革でできており、セオリーでは水、お湯は厳禁です。しかし私は2000円で買った革靴を3万円に戻さないといけません。
危ない橋を渡ってでもこの革靴の価値を取り戻すのが私の使命です。
私は、迷わずバケツにお湯を張り、スコッチグレインの革靴を1時間ほど漬け込みました。そしてそのあと、新聞紙を中にぎっしり詰め込み形を整えた後、3日間ベランダの日陰の部分で、新聞紙を取り換えながら陰干しをしました。
すると何という事でしょう。もくろみ通り購入当時に入っていたひどい履きじわはなくなり、革靴としてのカッコよさを取り戻しているではないですか。これであればシューツリーで管理するだけで形をキープすることが出来ます。
革靴の亀裂をなくす
しかし次の問題が出てきました。もともとかなりの履きしわが入っていたためシワのある部分に亀裂が入っていたのです。
次はこの亀裂を何とかしないといけない。私は考えました。
「靴クリームを塗れば目立たなくさせることが出来るのではないか」
「でも本当にそれでいいのか?それで3万円の革靴といえるのか」
「いい革靴なんだから結構厚い革が使われているの違いない」
「そうだ!サンドペーパーで亀裂をなくしてしまおう!」
元々2000円で中古で買った革靴です。それぐらいしないと面白くありません。
サンドペーパーで亀裂をなくすという技術は、以前プラ製品に対してのやり方を教わったことがあります。
まず、80番とか160番とか粗い番手のサンドペーパーで亀裂を無くしてから、徐々に番手を上げていき、最後に1500番手ぐらいのきめ細かいサンドペーパーで仕上ることで亀裂自体を無くすことが出来るのです。
プラにできることが革に適応できないわけない。そう思い込むことにして、亀裂の補修にとりかかりました。
先ずは粗い番手で亀裂周辺をこすっていきます。徐々に亀裂自体がなくなってきます。私の予想通り、亀裂がなくなるぐらいに削った程度では、まだ革らしさを残しています。さすが元3万円の革靴です。
あとは徐々に番手を上げて革靴自体に光沢を出していくだけ。トータル3時間かかりましたが亀裂を無くすことに成功しました。
亀裂が入ったヤンコのプレーントゥ(定価4万円)を4000円で落札
次に目を付けたのが、ヤンコのプレーントゥです。比較的綺麗に管理されているものの、経年の劣化によりところどころに亀裂が入っていることでこの値段で落札できました。
しかし、今の私にとって亀裂なんて大した問題ではありません。
「いい革靴は皮が厚い!」
この信念とサンドペーパーさえあれば何とかできる。そう確信して補修にとりかかりました。
しかしこれが意外に厄介でした。亀裂が思ったよりも深かったのです。亀裂の補修自体はできたのですが、一部黒革の下に眠っている肌色の部分まで到達してしまいました。
そんな時は靴クリームです。靴クリーム凄いです。
しっかりと、塗り込み手入れすることによって、露出した肌色の面は目立たなくなり、元の輝きを取り戻してくれました。
今では一番のお気に入りです。
亀裂が入ったスコッチグレインのウィングチップ(定価3万)を4000円で落札
これは本当に掘り出し物でした。
なぜ4000円で落札できたのかわからないぐらい補修するところがないのです。
しいて言えばところどころに亀裂が入っているぐらい。しかし1足目のストレートチップでスコッチグレインの革が多少のサンドペーパーではびくともしないことは実証済みです。迷いなくサンドペーパーをかけることにより新品同様のスコッチグレインのウイングチップを4000円で手に入れることが出来ました。
「1万円で10万円分の革靴を手に入れる大作戦」を実行してみて
もちろん手間はかかりますが、「お洒落は足元から」を実践するためには努力は必要です。
夏に暑そうな格好をして「お洒落は我慢」という人もいるぐらいですから私の手間なんて我慢のうちに入りません。
リペアしてからしばらくたちますが、どの革靴も未だに現役として頑張ってくれています。
「その靴かっこいいね」と褒められたときは、手間をかけた分喜びもひとしおです。
しかしこの方法、皆さんにお勧めできるかといえばそうでもありません。
実は元から持っていたスリッポンも同様にリペアしようとしたのですが、これは大失敗。
恐らくガラス革の製品だったんだと思うのですが、本当にボロボロにしてしまいました。
10年ぐらい愛用していた靴なのでショックは大きかったです。
なので皆さんも実行されるときは慎重かつ大胆に作業されることをお勧めしますが、基本おすすめは致しません。