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小松左京の日本アパッチ族は夏を涼しくする名作である

私はそれほど読書家というわけではありません。

しかもそれほど感性も優れた人間ではないので本を読んで感銘を受けるという事もそれほど多くありません。

しかし、そんな私でも感情を揺さぶられた本は何冊かあり、その中の1冊がこの小松左京さんの日本アパッチ族です。

私はこの本を読んで心の底から恐怖を感じました。夏の暑さ対策にぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

日本アパッチ族のあらすじ

この作品は1960年代の日本、大阪追放区を舞台にした作品です。

小説の中の日本は法律改正により「労働の権利」が「労働の義務」になった世界ですあり、主人公、木田福一は会社を解雇された後、一定期間内に再就職しなかったとして「労働法」違反により大阪追放区に追放されます。

追放区はまさに無法地帯であり、主人公も野犬に食われかけたり、飢え死にしかけたりします。

そんな中であったのがアパッチ族という集団です。

アパッチ族とは追放区に閉じ込められた鉄泥棒たちが、鉄とガソリンを食料とすることにより肉体的に進化した突然変異の集団です。

アパッチ族とともに過ごすうちに木田もアパッチの一員となります。

アパッチ族はもともと追放区内で日本政府への反抗を行っていました。それに手を焼いていた日本政府はアパッチ族に食料を供給していたスクラップ業者を逮捕します。それをきっかけにアパッチ族の反抗は生存をかけた日本政府との全面戦争に発展します。

時期を同じくして日本の各地の工業地帯から次々とアパッチ族が誕生し始めます。戦争を機に一大勢力となったアパッチ族は日本での自治をかけ日本政府を制圧し、日本を支配するというストーリーです。

社会的マイノリティの復讐劇

この話の元となったアパッチ族はかつて日本に実在していました。

第二次世界大戦直後、軍事施設や工場跡からくず鉄を不法に回収する人々の事を実際に「アパッチ族」と呼んでいたのです。

アパッチ族の多くは社会的マイノリティだったと言われています。

社会的マイノリティが鉄を食べ特殊な力をつけ日本を乗っ取るという一見荒唐無稽なSF作品ですが、私はこの作品に非常に恐怖を覚えました。

社会的マイノリティが力をつけ日本と対立するというストーリーが、非現実的な話だとは思えなかったからです。

物理的な力とそうでない力

鉄くずを食べて鉄人になる、というのは確かにむちゃくちゃな話だと思います。この物語でアパッチ族が日本政府を凌駕しているのはその物理的なパワーという事になると思います。

しかしパワーというのは何も物理的なものに限ったものではありません。むしろ物理的でないところにこそより強い力があると私は考えます。

ここで思い出されるのが2011年のフジテレビ抗議デモや花王不買運動の騒動です。

マスコミのある種強引な一部のブームの盛り上げ方や、日本下げと思われるような放送の仕方にネットで反感が高まり未だにフジテレビは凋落したままです。

私はこの一連の流れを傍観しているときに、日本アパッチ族の話を思い出しました。

アパッチ族の反抗とフジテレビの偏向報道問題が重なって見えたのです。

極端に言うとテレビという強力なパワーを使って日本における社会的マイノリティが日本を支配しようとしているように映ったのです。

そういう見方をすると「日本アパッチ族」は夏にぴったりの怖さ

いろいろ書きましたが、政治とか人種とか難しいことを言ういつもりはありません。

言いたいことは「そういう見方をすると小松左京さんの日本アパッチ族はめちゃくちゃ怖くてSFというよりもはやホラーですよ。」という話です。

正直に言うと、思想とかそういう難しい話は私は好きではありません。

夏は暑いですから、少しでも涼しさを感じられるように、夏の読書には小松左京さんの「日本アパッチ族」をお勧めします。

というか、そんなうがった見方しなくてもすごく面白いです。