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5年後10年後に事務仕事がAIに奪われない3つの理由

5年後10年後にホワイトカラーの事務仕事がAIに奪われるのではないかという話題が盛り上がっています。

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発端は将棋や、囲碁などのトップが人工知能に負けたこと。

それにより、AIの自己学習能力によりホワイトカラーの事務仕事は10年以内に姿を消すという説がところどころで聞かれます。

それ自体は非常に面白い考察です。

実際に、すでにAIを利用した事務の自動化案件は一部企業において始まっており、コールセンターの人件費を7割削減できたという事例も既に存在します。

AIの自己学習を利用した事務作業の自動化自体は5年後と言わずとも、すでに始まっているのです。

確かに、ソフトウェアとしてのAIが事務仕事を代替するまでには下手したら5年もかからないかもしれません。

ソフトウェアとしてのAIは既に単純な事務仕事ぐらいならできる

私は、中小企業とグローバル企業というの相対する2つの企業で事務とITにかかわって仕事をしてきました。

その実感として単純な事務作業であれば今すぐにでもAIに切り替えることは可能だと思います。

ホワイトカラーの事務仕事が奪われない派の主流意見として、「日本企業の事務仕事は企業ごとに独自のルールに縛られており簡単には対応できない。」という意見があります。

しかしその点については見当違いな指摘だと私は考えます。

AIが従来のソフトウェアと全く違う点、それは自己学習機能があるという事です。

例え日本企業の企業ごとの独自ルールがあったとしても、業務が定義可能なのもであれば、AIは自己学習することによりその問題をいとも簡単に乗り越えることが出来るでしょう。

企業ごとの独自ルールなんて、誤差みたいなものです。

ですので技術的には5年もあれば事務仕事をAIに代替させることは可能です。

それでも5年後に事務仕事はなくならない

しかし、それでも5年後に事務仕事がなくなるという話はさすがに無茶です。

今回は5年後に事務仕事がAIに取って代わられるというのは無理筋である3つの理由を挙げたいと思います。

事務仕事用のAIプラットフォームの整備が不十分であること

企業は中長期計画をもとに経営計画を立てています。

3年、5年、10年というスパンで事業をどうしていくかという筋道を立てています。

もし、5年後、10年後にホワイトカラーの事務仕事をAIに代替させようとするならば、今段階で経営計画に組み込む必要があります。

しかし、事務仕事をAIに代替させるプラットフォームはまだ十分に整備されていません。

既に事務業務のAI化ビジネスに取り組んでいる企業はあるものの、まだまだメジャーとは言えないでしょう。

多くの企業はそれらの先鋭的な企業の事例を注視している状態です。

多くの企業は事務業務のAI化の効果を確認してから導入検討を行うことになります。

そういう観点で行くと5年というのはさすがに短すぎで現実的な数字とは言えません。

下請けメーカー等の中小企業はまだまだアナログだという事

2つ目の理由は、中小企業の存在です。

この数年でかなり状況は変わってきたものの多くの中小企業はまだまだアナログな仕事の仕方をしています。

私の経験上、ITに対する中小企業の認識は、最先端のIT企業から比べると5年ほどは遅れています。

未だに電子メールではなくファックスでやり取りしている会社だってあります。

少なくとも今ファックスでやり取りしている企業が5年後に事務仕事をAI化するなんて言う話は想像できません。

ただし、中小企業の場合、一旦事務業務AIのプラットフォームが一般化すると素早い意思決定ができるという利点もあります。

そのため、中小企業においては事務業務のAI化対応は積極的に取り入れる企業とあくまでもアナログで行く企業に2極化していくと考えます。

そもそも事務業務のマニュアル化が不十分な企業が多い

最後の理由は、そもそも事務業務の可視化、形式化が不十分な企業が多いという事です。

原則的に単純な事務業務というものは明文化された手順によって行われます。

しかし、そこが「なあなあ」になっており単純作業の形式化、マニュアル化が不十分な企業も多く存在します。

販売、営業、製造など、その企業のフロントとなる分野においては業務がマニュアル化されているのに、ホワイトカラーの事務業務のマニュアル化が不十分な企業は驚くほどたくさんあります。

事務業務をAIに自己学習させるためには、最低限その学習元となる業務の骨子が固まっていることがスタートラインになります。

しかし、現状そのスタートラインすら立っていない企業がとても多いのです。

業務の形式智化は慣れない人間にとっては簡単なものではありません。

その状態から、骨子を作りAIを導入し自己学習させシステムをリリースすると考えた場合、5年という期間はあまりにも短すぎます。

いずれは事務作業はAIが行う事になる

私が挙げた3点の理由はどれもソフトウェアであるAI側の問題ではなく、ハードウェアとなる企業、そして人の問題です。

AI学者の言う5年、10年でホワイトカラーの仕事がなくなるというのはAIというソフトウェアの面からみると実現可能です。

しかしそれを享受する企業、人間がそれに追いつくには5年というスパンは短すぎます。

PCでいうならソフトウェアにハードウェアが追い付かないという感じでしょうか。

しかし、いずれ事務作業がAIに取って代わられる日は来ます。少なくともAI側にはその準備ができているのです。

あとはどれぐらいの期間で事務業務用のAIプラットフォームが形になるか、企業がどの程度のスパンでそれを導入検討するかだけの問題です。

なので5年10年ではホワイトカラーの仕事はなくなりませんが、長期的に見ると事務業務の多くがAIに取って代わられるでしょう。

私もホワイトカラーなのですが、どうしたものか考え物です。